猿美夫婦の日常~学園Kプレイしてみた~※ネタバレ画像等有り注意
「何だこれ…‥」
風呂から出ると、テーブルの上に見慣れないゲームが置いてあった。
手に取ってみると自分達に似たキャラクターが描かれていた。こんなゲーム美咲が買うと思えず首を傾げていると洗い物を終えた美咲が近寄って来た。
「あーなんかそれ俺達が学園ゲームになったんだと。よくわかんねーけど尊さんがかっけーから貰った」
「ふざけんな捨てる」
「ま、待てよ!勿体ねぇだろ!!ちょっとぐらいやらせろよ」
「これ乙女ゲーってやつだろう?読みゲーだしアクションとかねぇし、美咲が尊さん攻略するとかムカつくから絶対許さん」
「たかがゲームだろうが…‥試しに俺が風呂出たら一緒にやろうぜ。お前と俺もいるっぽいし」
「チッ…‥」
そう言って風呂に向かう美咲を横目にソファーに腰掛けるとパッケージを開けゲーム機にセットする。
どうせ読みゲーだ連打しまくって尊さんのところだけ終わらせてやる。
そう思って起動したものの、やはり美咲が気になる。
大分顔は違うは美咲には変わりないしとりあえずプレイしてみるか。
名前は、伏見美咲でいいや。俺の嫁。
無駄な会話は飛ばしつつ進めていく。
「ゲーム内でも絶好調に童貞丸出しだな…‥」
まあ、そんな美咲が可愛いんだけどな。
なかなか再現率高いなこのゲーム。
「俺か…‥何か変な気分だ」
「ヤタガラスシールって何だよ…‥クソダサそうだな」
「…‥何だよこれ可愛いじゃねぇか」
「童貞乙…‥可愛いけどよ…‥なんかスゲームカつく」
「オイ、サル」
「あっ?って美咲?!いつ出たんだよ」
「今さっき、てか何勝手に初めてんだよ」
「先に美咲だけ味わっておこうかと」
「気色の悪ぃ言い方すんじゃねぇよ!!でもどうだ?面白いか?」
「美咲が可愛いけどイライラする」
「なんだよそれ…‥」
美咲がソファーの後ろから俺の首に腕を回し、ゲームの画面をのぞき込む。
やっぱりゲームより本物だよな。
肩に乗る美咲の頭にこつんと自分の頭を寄せるとボタンを押す。
「なっ…‥お、オイ早く先行けよ!!!」
「ムカつくけどこれはまだ許せる」
「へ?」
「俺が美咲に傘を持ってもらう事はまず無いからこれはフィクション」
「うっせーバカ!!」
「笑ってる美咲可愛い…‥てかこのゲーム美咲の童貞力と可愛さだけを集めた感じだな」
「ケンカ売ってんのか」
「褒めてんだろ」
「ぶん殴るぞ」
「なんか…‥下見えないせいで妙にホモっぽいな」
「やめろよ…‥それじゃ俺までホモみたいじゃねぇか」
「むしろこの美咲がホモなら乙女ゲーで攻略されることが無くて安心できるのに」
「何言ってんだお前?」
「…‥何こんな平凡顔な女とイチャついてんだよ美咲ィ!!」
「ちょっと待て、何だこの名前」
「あームカつくムカつくムカつく!!!」
「オイ、猿比古この名前」
「俺の美咲に手ぇ出すんじゃねぇーよクソ女!!!!」
「…‥ダメだコイツ」
「何童貞が女の手ぇ触ってんだよ…‥慣れてんじゃねぇよクソ!!!」
「な、なあ猿比古…‥そんなにキレるんならゲームやめろよ」
「はあ?!美咲をコンプするまで誰が止めるか!!」
「どういうことだよ」
「ムカつく可愛い悔しい…‥」
「な、泣くなよ」
「俺の扱いをテキトーにするんじゃねぇよ美咲ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!そんなにあの不思議系怪力女がいいのかよぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「猿比古、やっぱりもう止めようぜ?」
「嫌だ!!結末を最後まで見届ける!!!」
「めんどくせぇな…‥」
「俺も好きだよ美咲!!!愛してる!!!」
「もう勝手にしろ」
「…‥ヒロインより美咲のが100倍可愛い」
「あーそーですか」
「妬くなよ、リアルの美咲より可愛い美咲なんて存在しねぇっての」
「…‥ばーか」
「中学の時…‥こんな風に美咲が見舞いに来たよな」
「あったな」
「あの時かも」
「ん?」
「俺が美咲に惚れたの」
「…‥あっそう」
「片想いの時は辛いばっかりだったけど…‥今は俺、美咲といられて毎日幸せだから」
「…‥おう」
「けどまさかゲームで今の幸せを改めて噛み締める事になるとは思わなかった」
「普通は無いよな」
「…‥今年は俺からチョコ贈るわ」
「そうかよ、じゃあ今年はチョコ作らねぇからな」
「作って下さいお願いします!!!!」
「カッコつけてるのに最後の一行で吹く」
「お前のせいだろ」
「まあ、どっちにしろ可愛いだけだな」
「チッ…‥何俺に断りも無く美咲の事可愛いとか言ってんだよ謝罪しろブス」
「お前…‥」
「俺もだよ!!!美咲大好き!!愛してる!!!」
「っせーな!!!耳元でデケェ声出すんじゃねぇーよ!!!…‥てか何かこっ恥ずかしいゲームだったな」
「まあ、女共がキャーキャー言う為だけに作られたゲームだからな」
「読むだけで退屈だし、もっとこうバトルとか入れればいいのにな」
「もう乙女ゲーじゃないだろそれ…‥で、ほら今度は美咲の番」
「…‥もういい」
「飽きるな、せめて俺だけやれ」
ポンポンとソファーを叩くと美咲は俺の足の間に腰を下ろす。美咲にゲーム機を渡し、美咲の腰に手を回すと肩に顎を乗せる。
「そのセーブデータからやれば分岐だから直ぐ始まる」
「おう」
「お前…‥女にはもっと優しくしろよ!!!」
「ゲームだろ…‥てか俺は優しさの安売りはしない」
「微妙にゲーム内の俺の台詞パクるなよ」
「俺の優しさは美咲だけに無償で提供します」
「な、なんか企業ぽくて嫌だ」
「なんか…‥年齢的に無理があるな」
「室長が十代って時点でな」
「てかお前の顔なんか女みてぇだな」
「実物の方がイケメンだって事?」
「言ってねぇし!!むしろゲームの方が可愛気があるわ」
「美咲はゲームだと童貞と可愛さが濃厚だよな」
「うっせー!!童貞童貞言うな!!!」
「けど俺はリアルの美咲以上なんて思わないけど」
「・・・」
「しょせんゲームはゲームだ」
「さっきまでゲーム内の俺の行動に一喜一憂していた奴とは思えない発言だな」
「…‥何か、初めてあった時の猿比古みたいだな」
「そうか?こんなに首痛いポーズばっかしてた記憶無いけど」
「そこじゃねぇーよ!!」
「名前の違和感パネェな」
「この女絶対俺の事馬鹿にしてるよな」
「何だこの選択肢…‥プッ!!!」
「やっぱりこのゲーム自体俺の事馬鹿にしてる」
「お前の方が面白いな!!」
「…‥チッ」
「お前日焼け止め塗ってたよな?」
「美咲みたいに黒くならないで赤くなって腫れるからな」
「でも最近はちょっとは顔色よくなってきたよな」
「嫁が俺の食生活をきっちり管理してるからな。健康診断の数値スゲー良くなったって医者に言われた」
「マジか!!その調子で好き嫌いせずに長生きしろよ!!」
「…‥うん」
「マジでムカつくなお前!!!」
「俺に当たるなっての」
「しつけぇ…‥マジでお前そっくりだな」
「ゲーム内の俺も美咲の事好きなんだな…‥」
「…‥その解釈は違くねぇか?」
「ゲーム内の俺負けすぎだろ…‥」
「リアルの俺は毎日美咲の可愛さに負けっぱなしだから許せよ」
「ムカつく!!!」
「何か、猿比古の方はやたら俺出て来るな」
「寧ろ美咲の方は俺の扱いが雑すぎるんだよ」
「…‥なんかお前先生っぽいな」
「この女頬杖ついてるからきっと顎の筋力が低下している」
「やめろ、夢を壊すな」
「夢は夢でしか無いんだよ」
「なんかキラキラしてんな…‥」
「この状況で相手が美咲だったら俺だったらヤッてるけどな」
「もう黙ってろ」
「俺も100均でサボテン買ってきて猿比古って名前付けてやろうか?」
「美咲の愛を注がれる猿比古は俺だけで十分だ。つーか俺だけでも足りてないんだから余計な真似すんじゃねぇよ。もっと愛注げ」
「注いだら何かなるのかよ」
「今よりもっと美咲の事幸せにする」
「…‥あっそ」
「美咲逢いたさに女をダシにつかうとか流石は俺」
「お前ほど乙女ゲーに向かない奴も珍しいな」
「チョコバナナか…‥そういや暫く食ってないな」
「俺はチョコバナナより美咲のバナナが」
「死ね」
「誰が美咲を残して死ぬか、生きる!!!」
「お前動物に好かれるタイプなのか?」
「美咲は嫌われるタイプだよな」
「うっせーな!!…‥なあ、サル今度の休み」
「動物園なんて臭いから嫌だ」
「…‥なら鎌本達と行くからいい」
「人混みに獣臭なんて罰ゲームだろ?!せめて猫カフェぐらいで我慢してくれ」
「猫カフェならいいのか?」
「猫寄って来なくても拗ねるなよ?」
「おう!」
「お前…‥ゲーム内でもモテるとかマジでムカつく」
「自分の好きな相手以外から向けられる好意なんて何の意味も無い」
「…‥お前よく怪我しなかったな」
「ゲームだからな。普通だったら痛みで暫く動けないだろ」
「ゲームで良かったな」
「なんか…・・青服は全体的に女っぽいな」
「俺に言うなよ」
「へぇ…‥お前の方は卒業後の話しなんだな」
「同棲だか結婚か」
「…‥なんか、いいな」
「は?」
「学生時代からの相手と結婚て一途でよくね?一生一人の女を愛すって男らしくていいよな!!」
「…‥うちだって同じじゃねぇか。コイツ等なんかよりずっと長い付き合いだろ」
「そうだけど…‥俺達は学生から付き合ってたわけじゃねぇし」
「俺はずーっと一途に美咲の事想い続けたけど?」
「…‥何だよその目は」
「美咲は…‥どうだか知らねぇけど」
「…‥俺だって…‥お前だけだっての」
「…‥タンマツの録音機能起動しといて良かった」
「タンマツ出せ、折る」
「へぇ…‥お前惚れた女には案外優しんだな。家事出来ねぇクセに分担するとか」
「ゲームだからだろ。つーかセプ4に勤めてて家事分担なんて出来ねぇだろ…‥それに美咲が家事嫌だってんなら洗濯はクリーニング出せばいいし掃除だってハウスキーパー呼べばいいし料理だって出来合いのでいいよ」
「んなの金の無駄だろ?それに俺働いて無いのに家事ぐらいしないでどうすんだよ…‥それにお前最近はたまに出来合いのもの買ってくると食わねぇじゃん!!」
「それは…‥舌が美咲の味覚えたから…‥何となく出来合いだと食べる気しねぇんだよ。でも美咲の負担になるなら別にいい…‥たまに作ってくれれば嬉しいけど…‥」
「…‥バーカ、作るに決まってるだろ。せ、折角数値が良くなったんだから」
「…‥うん」
「あっ、もうこんな時間じゃねぇか。寝るぞ」
ゲームの電源を落とすと美咲が立ち上がり、俺の手を引く。
リビングの電気を消して寝室に向かい、先にベットに入った美咲が毛布を上げる。
そこに体を捻じ込むと美咲を抱き締めるとキスをすると目を閉じた。