猿美夫婦の日常(美咲誕生日編)
いつもと何も変わらない夜。
テレビを眺める猿比古の横でゲームをしていた。
11時を過ぎ、そろそろ寝ようかとゲームの電源を切ると猿比古もテレビを消した。
「美咲、ちょっと冷蔵庫から水取って来て」
「今から寝るのにか?」
「喉乾いた」
「ったく…‥」
渋々キッチンに向かい冷蔵庫を開けると、水と書かれた付箋が貼ってある白い箱が入っていた。こんなもの買ってきた覚えは無い。
「猿比古ぉー何だよこの箱」
「いいから持ってこいよ」
はあ?と思いつつそれを手にした瞬間、気付いた。
ああ、今日は。
「…‥なあ、これって」
「開けてみたら?」
促されるままにテーブルに箱を置くと蓋を開けた。
予感的中。
中にはちょっとまえテレビでやってたスイーツ特集で俺が食いたいと言っていたケーキが入っていた。フルーツが山の様に乗っているそれにはチョコレートで出来たプレートが飾ってある。そこに書かれていたのは『HAPPYBIRTHDAY FUSIMI MISAKI』フルネームかよ。って、ちょっと待て。
「オイ、猿…‥俺の名前間違ってるんだけど」
「間違ってねぇだろ」
「いや、お前と混ざってるぞ。店員が間違えたんだろうけど…‥まあ、サンキューな」
「だから間違ってないって。美咲は俺の嫁なんだけから伏見美咲で合ってるだろ?」
「なっ…‥!!!」
「誕生日おめでとう…‥美咲」
「…‥おう」
「ククッ…‥顔真っ赤」
「うるせぇ!!!暑いんだよ!!!」
「はいはい、クーラー効いてるけどな」
「ッ…‥せっかくだけど今日は寝るから起きてから食べる」
「うん。あっ、あと俺今日休みなんだ」
「は?聞いてねぇけど」
「言ってないからな。だから、起きたら美咲が行きたいとこ何処でも連れてってやるよ」
そう言うと猿比古は笑ってソファーから体を起こすとケーキを冷蔵庫にしまい、戻って来ると俺を抱き上げて寝室に向かった。
ベッドに入ると、いつも通り直ぐに眠気に襲われる。猿比古は俺の髪を撫でながら額や頬にキスをしてくる。それが何だかすごく気持ちよくて気付いたら眠っていた。
それはいつも通りな、特別な日の始まりだった。
END.