徒然草

日常徒然やTwitterじゃ足りなく、文章にするには短い萌をツラツラと書き殴る予定。生まれながらの腐女子。只今、YGO海表再熱中。 HPではYGO→海表。pixivでは進撃→リヴァエレ。ヒロアカ→轟出。K→猿美。東京喰種→平有。青エク→メフィアマ。黒バス→原花、高緑、木宮、紫氷、水金、諏佐今など書いてます。 固定CP派。

特別な日常(諏佐今)

今日は俺の誕生日だ。
日付が変わると同時に携帯が光る。何通かメールが来たようだ。
その気持ちは嬉しい限りだが、今はダメだ。何だかとてつもなく眠い。起きたら返信しよう。点滅する携帯を眺めつつ目を閉じた。
それからどれぐらい時間が経ったのか、ふと目が覚めると携帯が眩い光を放っていた。眩しさに目を細めながら携帯に手を伸ばすとディスプレイには今吉の文字。
あっ、と思った瞬間着信が途絶え待受けにはメール35件、着信25件の通知が光る。

 

 

「しまった…‥」

 

 

恐る恐る着信履歴を開くと全て今吉からだった。
掛け直すか、寝たふりを貫くか悩んでいるとまた今吉から着信があり咄嗟に通話ボタンを押してしまった。

 

 

「あっ…‥い、今吉?」


『はよ、開けてや』


「えっ?」

 

 

すると玄関のドアからガンッと音がした。
ああ、これは絶対ヤバい。携帯を放り投げ慌てて玄関のドアを開けると、いつも通りの顔に青筋立てた今吉が俺の横をすり抜け部屋に入って来た。そして定位置であるテレビの真ん前に座るとテーブルの上にコンビニの袋を置いた。多分、ケーキだろう。

 

 

「あの…‥今吉」


「無いわ」


「…‥すまん」


「ホンマに無いわ」


「悪かった」


「フツー遠距離でもないカップルが相手の誕生日に何もせぇへんと思う?」


「いや…‥お前も部屋来るとか言ってこなかったし、毎年してるみたいに部活で祝ってっくれるんだと思って…‥眠かったし」


「部屋、隣やで?日付が変わったら突撃して2人で祝うとか想定出来へんの?何で恋人の誕生みんなでワーワーやって終わりにする思うん?眠かっただ?知るかボケ!!!アホちゃうん?そんなんやからいつもイイ人止まりで終わるんやで自分!!!」


「…‥返す言葉もございません」


「ありえへん!!お前みたいな男は告白されて付き合っても直ぐフラれるタイプや!!!」


「いや…‥そうでもないぞ」


「そこは殊勝にすいません言うとちゃうんか?!!つーか…‥何なんその話聞いてへん」


「だってもう1年経っただろ」


「…‥へ?」


「俺達、先月で付き合って1年経ったぞ」

 

 

ポカンとした顔で俺を見つめる今吉が何だか可笑しくてつい吹き出してしまった。
まだ付き合っていない頃、『女子って何でいちいち記念日とか作りたがるんやろか…‥付き合って2週間記念とか意味わからんわ。誕生日やってそう特別なことせえへんのに騒ぎすぎちゃうん』とぼやいていたので今吉はきっとそう言うのが煩わしいタイプなんだと思った。そう言えば、俺は記念日とか大事にする女の子っぽい子の方が好みだけど、と返した気もする。

 

 

「おっ、覚えとったん?」


「そりゃあ忘れないだろ…‥で、俺は誕生日にフラれるのか?」


「…‥ムカつく!!自分何か最近性格悪くなったんちゃうん?!」


「一緒にいると似てくるらしいからな。気を付ける」

 

 

はあ?!と今吉の口から反論が出る前に口を塞いだ。
触れた唇が、いつもより冷たい。もしかして俺が気付くまでずっと外で待っていたのだろうか。そのまま体を抱き締めてみると、やっぱり服も冷たかった。

 

 

「…‥ごめん」


「…‥こんなんで許される思うたら甘いで」


「じゃあ、どうしたらいい」


「ケーキ、折角買ってきたんやけど」


「午前2時に食べるのはキツイな…‥明日の朝じゃダメか?」


「これからワシをベッドまで運んで朝起きたら着替え手伝ってケーキもあーんて食べさせてくれるなら許したる」


「はいはい、わかりました」


「何やその自分は悪ないと思ってますみたいな言い方は」


「ごめんなさい」


「よろしい」

 

 

とりあえずケーキを冷蔵庫にしまって、眼鏡を外し両手を広げて待っている今吉を抱き上げるとベッドに運んだ。さすがに重い。

 

 

「今重い思うたな」


「…‥軽くは無いだろ」


「まあ、180の男抱き上げんのは諏佐ぐらいやろなぁ」


「だろう…‥な」


「痛っ!!何で落とすん?!ワシの扱い雑すぎちゃうん?!!どないやねんこの扱い!!」


「あーはいはい。奥つめろよ寝れない」


「諏佐のいけず!!!」

 

 

ギャーギャー騒ぐ今吉を奥に押しやると自分もベッドに入った。
ミシッとベッドが悲鳴を上げる。朝までもつといいんだが。暴れる今吉の体を抱き寄せるとピタリと嫌味が止まった。

 

 

「…‥諏佐」


「んー…‥」


「…‥誕生日おめでとう」


「おう、ありがとう」


「…‥来年は」


「ん?」


「来年はちゃんと2人で祝おうな」


「…‥そうだな」

 

 

その時には少し部屋が狭くなっても、大き目なベッドを買おう。
多分、いやきっと大学生になったら隣の部屋じゃなくて同じ部屋で過ごすのだから。

 

 

「おやすみ…‥佳典」

 

 


普段の作ったような笑顔より少しぎこちない笑顔で今吉が呟く。
こつんと額をくっつけおやすみ、と返すと目を閉じだ。

 

END.