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徒然草

日常徒然やTwitterじゃ足りなく、文章にするには短い萌をツラツラと書き殴る予定。生まれながらの腐女子。只今、YGO海表再熱中。 HPではYGO→海表。pixivでは進撃→リヴァエレ。K→猿美。東京喰種→平有。青エク→メフィアマ。黒バス→原花、高緑、木宮、紫氷、水金、諏佐今など書いてます。 固定CP派。

英雄の肖像(リヴァエレ)

進撃

あの日から6年の月日が流れた。

徐々に開拓が進み家から山を一つ越えた場所に街が出来き、海辺にも小さな集落が出来た。

人々は壁の外に希望を抱き、自らその道を切り開いて行った。

それは全て、アイツが自らを犠牲にした上でもたらした希望だった。

誰よりもその希望を欲し求めたアイツの姿は色褪せることなく、俺の胸を焦がし続けている。

俺はあの日からアイツの眠るこの場所で一人静かに暮らしていた。

朝起きて、顔を洗って外に出るとアイツの墓標の前で指を組み祈る。

それに意味が無いとしても、構わなかった。

洗濯をして馬に餌をやり適当に朝食をとると水を汲みに山に入る。

途中、木の実や山菜を摘みつつ仕掛けた罠に獲物が掛かっているか確認し水を汲み終えると、その川辺に群生している白い花を摘み家に戻る。

荷物を置きアイツの墓標に花を手向けると、直ぐ近くの木陰に腰を下ろし今はもう戦う為では無く狩りの為の道具として使っている立体起動装置の手入れをする。

布で汚れを拭っている時に、無数についた細かい傷を見て少しだけ感傷に浸る。

決して戻れず、繰り返してはいけない過去。だが、そこには失った全ても在った。

昼飯は干してあった魚を齧り、午後は海に行き夕方まで釣りをする。

赤く燃える太陽を眺めていると隣にアイツがいるような気がした。

家に戻り夕飯の支度をして風呂を焚き、余った魚を外に干すとそのままアイツの墓標に近寄る。銀の指輪が鈍く光る左手を、木を括り付けただけのそれに伸ばすと月明かりに照らされた己の青白い指先に口付けた。

毎日、毎日、その繰り返しだった。

この日々が苦痛だと思った事は一度も無い。

この何も無い平凡な日々は、アイツが俺に残してくれたものに違い無いからだ。

それでも、そう解かっていても時より無性に泣きたくなった。

ああ、隣にアイツがいてくれればと嘆きたくなる夜があった。

少しも薄れず、揺るがない想いが俺の中であるからこそだと思う。消えるはずがない。

俺は、今でも変わらずお前を愛している。

結局そんな夜は毛布を引っ張りアイツの墓標の横に座り夜を明かす。

こんな俺を見たら、きっとお前は笑うだろう。

ふと頭を過ぎるアイツの笑顔に目頭が熱くなる。馬鹿らしい、と呟くと毛布を顔まで上げ目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

「…‥さん、リヴァイさん!」

 

 

「ッ…‥!!ああ、お前か…‥」

 

 

「おはようございます。またこんな所で寝て、天体観測でもされてたんですか?」

 

 

「…‥そんなところだ」

 

 

「此処は夜になると星がよく見えますもんね。あっ、これお手紙です」

 

 

 

 

 

目を開けると、初めて逢った頃のアイツと同じくらいの少年が立っていた。

コイツは街から来る運び屋だ。わざわざ山を越えて定期的にハンジ達からの手紙や荷物を届けに来る。仕事だとはいえ自分から街に出向く以外人と接する機会は殆ど無い俺にとってはいい気晴らしになった。

差し出された手紙を受け取ると差出人はジャンからだった。

ハンジ達やジャン夫婦は半年に1度は此処に来る事があった。そろそろジャン達が来る時期かと手紙を読み進めると下の娘が体調を崩して思わしくないので、今回は上の息子だけで訪ねてもいいかと言う内容だった。

 

 

 

 

 

「…‥返事を書く。中に入れ茶ぐらい淹れてやる」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「とは言っても雲の流れが速いな。早急に仕上げる」

 

 

「はい、ちょっと馬を繋いで来ますね」

 

 

 

 

 

先に家に入ると湯を沸かしカップを2つ用意する。

アイツと俺が旅に出る時まだミカサの腹にいた子供ももう5歳だ。一人で来るのは構わないが、大丈夫だろうか。こっちに来る度に帰りたくないと駄々を捏ねてはいたが、やはり親と離れるとなると別だろう。

ポットに茶葉を入れ湯が沸くまでの間にペンと便箋を机に準備する。

すると運び屋の少年がおじゃますます、と中に入って来た。

俺は視線で促すとソイツは椅子に座り、何か言いたそうな視線を向けてくる。

 

 

 

 

 

「あの…‥リヴァイさん」

 

 

「勝手にしろ」

 

 

「はい!」

 

 

 

 

 

すると喜んで本棚に置いてある古びた本に手を伸ばし読みだした。

毎日のようにアイツが読んでいた本。壁の中に囲われていた人類が夢見た外の世界。

それを今、外の世界で生きる人間が読んでいるなんて少し滑稽だと思うがコイツはそれがどうも気に入ったらしい。

俺は紅茶を淹れカップを机に置くと返事を書き始めた。

三十分ほどで手紙を書き終え、それを運び屋に渡すと山の入り口までソイツを見送り自分は川辺へと向かった。

それから一ヶ月程後、ジャンとその息子が家に来た。

あの頃より随分交通の便が良くなったとこんな時にふと思う。

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、リヴァイ兵士議会長」

 

 

 

 

 

馬から下りたジャンが仰々しく敬礼をする。

苦笑しながらジャンの肩に手を置くと、少しだけ肩から力が抜ける。

 

 

 

 

 

「いい加減その呼び方は止めろ、今はお前が議会長だろ」

 

 

「すいません…‥つい、癖で」

 

 

「エレンは?」

 

 

「荷台で寝てるんです。ちょっと待っていて下さい、エレン着いたぞ!」

 

 

 

 

 

ジャンが荷台の布を上げると、そこで腹を出して寝転んでいる子供を抱き上げた。

エレン、と名前を呼ぶと閉じていた瞳がゆっくりと開く。

黒い髪や輪郭はミカサ譲りだが、目鼻立ちはジャンによく似ている。

血の繋がりなんて無いのに何処となくアイツに似ている気がした。

 

 

 

 

 

「ん…‥リヴァイおじさん?」

 

 

「久しぶりだな」

 

 

 

 

 

俺の姿を見るとジャンの腕から下り、駆け寄って来る。

俺はその体を抱き上げると、言いようの無い懐かしさと小さな命の重みを感じた。

それはアイツ以外に初めて感じた、愛おしいと言う感情だった。

 

 

 

 

 

「エレン、重くなったな…‥背も随分伸びたか?」

 

 

「うん、オレね同い年の奴の中で一番大きいんだぜ!」

 

 

「だろうな」

 

 

「へへへ、リヴァイおじさんなんてすぐ追い抜いてやる!!」

 

 

「ほう…・・」

 

 

「こ、こらエレン!!」

 

 

「それで、ジャンその荷物は何だ?エレンだけしか泊まらないのだろう」

 

 

「ああ、これはハンジさんから紅茶や食糧です。あと手紙を預かってますんで今から運びます」

 

 

 

 

 

ジャンが積荷を下ろしている間、じゃれてくるエレンの相手をする。

何が楽しいのか足にしがみつてくるエレンを引き離し、ズボンを掴んでぐるりと一回転させると子供特有の笑い声が響く。

積荷を俺の家に運びながら時より此方に向けられるジャンの視線がすっかり父親そのもので、俺は自分だけが変われずにいる事を痛感した。

だが、ハンジに言わせればそれでいいらしい。

変わらないでいられる人の方が少ないし、変わらないでいてくれる人がいるお蔭で変わっていった人は後ろを振り返る事が出来るんだと。

 

 

 

 

 

「リヴァイ兵…‥リヴァイさん、終わりましたので俺はこれで」

 

 

「ああ、今日は泊まらなくていいのか?」

 

 

「実は、そこの街に視察で2週間滞在する事になったので王都には戻らないんです」

 

 

「…‥アルミンか」

 

 

「多分、そう図ってくれたみたいで。あっ、万年筆とインクはアルミンからです。」

 

 

「そうか、なら帰るまでに礼を書かなくてはな。そう言えばマリアは大丈夫か?」

 

 

「ええ、ちょっと風邪が長引いているだけなんで」

 

 

「そうか、なら良かった」

 

 

「エレン、父さんの仕事が終わるまでいい子にしてちゃんとリヴァイさんの言う事聞くんだぞ?」

 

 

「うん!」

 

 

「約束だぞ?…‥すいません、リヴァイさんお手数お掛けしますがよろしくお願いします」

 

 

「ああ、お前もしっかり仕事をしろよ。幾らアルミンが図ったとは言え何も無い場所にわざわざ兵士議会長を寄越したりしないだろう」

 

 

「はい、勿論です」

 

 

 

 

 

その言葉に一切の迷いも揺らぎも無い。

こんなにあの重苦しい肩書を背負うに適任の奴だったか。

アイツに見せてやりたかった。きっと、喜んだだろう。

 

 

 

 

 

「リヴァイさん」

 

 

「ん?」

 

 

「ちょっと、失礼しても」

 

 

「…‥ああ」

 

 

 

 

 

ジャンは俺の横を通り過ぎるとアイツの墓標の前で立ち止まった。

俺はズボンを引っ張るエレンを抱き上げるとジャンの後ろ姿を見つめた。

アイツにとってジャンは言葉を交わせば分かり合えない事が多かったかもしれないが決して悪い関係では無かったはずだ。

共に戦い、失い、生きた仲間であり友人だった。

アイツの死に、ジャンも少なからずとも影響を受けたはずだ。

ジャンは暫く墓標の前から動かず祈るわけでもなくただ拳を握りしめていた。

そして日が傾く前にジャンは街へ向かった。

俺はエレンと一緒に海に魚を釣りに出かけた。自分の半分ほどの小さな手を握り浜辺へと石段を下りて行く。

 

 

 

 

 

「ねえ、リヴァイおじさん。前来た時よりおっきいの釣れるかな?」

 

 

「…‥お前の運次第かな」

 

 

「オレね、去年母さんが釣ったのより大きいの釣るんだ!」

 

 

「ああ、お前の母親はやたら当たりがデカいからな」

 

 

 

 

 

浜辺に転がっている流木を椅子代わりにして釣りを始める。

あれだけはしゃいでいたエレンも釣竿を握ると大人しくなった。俺はその横に腰掛けると穏やかな海を眺めた。

辺り一面が燃えるような夕焼けに照らされるまでエレンは釣りを止めようとはしなかった。意地でもミカサより大きい魚が釣りたいらしい。こういう頑固なところはミカサに似ていると思う。

 

 

 

 

 

「エレン、そろそろ帰るぞ」

 

 

「・・・」

 

 

「また明日釣ればいい」

 

 

「…‥うん」

 

 

「今日の夕飯はエレンが釣った魚で作ろう。何がいい?」

 

 

「…‥パイのやつ」

 

 

「よし、じゃあっとっとと準備しないとな。アレは案外時間がかかる」

 

 

「オレもお手伝いする」

 

 

「よし、行くぞ」

 

 

「うん、バケツは俺が持つ!」

 

 

「ひっくり返るなよ」

 

 

 

 

 

大丈夫、と言いながらもよろけるエレンの姿に思わず吹き出すと脹れっ面で歩いて行った。家に戻ると早速夕食の準備をした。エレンに野菜を洗わせ俺はパイ生地を作る。

きっとエレンが食べたがると思って昨夜から下準備をしておいて良かった。

スープとサラダも作らなくては偏った食事を摂らせて体調でも崩させたら大変だ。

 

 

 

 

 

 

「オレ、これキライ…‥」

 

 

 

 

 

出来上がった料理を見てエレンが呟いた。

昔の俺なら問答無用でぶん殴って口に突っ込んでいただろう。

だが、どうもエレンには甘くなってしまう。

 

 

 

 

 

「好き嫌い言ってるとデカくなれねぇぞ」

 

 

「母さんもそう言うけどオレおっきいもん」

 

 

「じゃあ食べなければいい。その変わりそれ以上背が伸びなくなっても知らないからな」

 

 

 

 

 

そう言いながら俺はサラダにフォークを刺しエレンが苦手だと言った野菜を口に含んだ。

エレンは暫く俯いていたがおずおずと手をそれにフォークを刺すと一口齧りゆっくりと咀嚼した。すると驚いたように目を見開き俺に視線を向ける。

 

 

 

 

 

「甘い…‥何で?」

 

 

「そう言う種類なんだよ。これなら食べられるだろ」

 

 

「うん!おいしい」

 

 

 

 

 

笑顔でそれを食べ進めるエレンの頭を撫でると、横でアイツが笑った気がした。

食事を終え風呂の準備をする。その間、エレンは拙い字で手紙を書いていた。

俺もその横で紅茶を飲みながらハンジやアルミンに手紙を書いた。

手紙を書き終え、風呂に入るとエレンが星が見たいとと騒ぐので外に出た。

今日は雲が少なくよく空が見えた。夜空一杯に散らばる星を見てエレンが目を輝かせる。

俺はエレンを肩車してやるとアイツの墓標の横に立った。

誰かとこうして星を見上げるのも久しぶりだ。

暫く黙って夜空を眺めていると、不意にエレンが口を開いた。

 

 

 

 

 

「ねえ、リヴァイおじさん」

 

 

「ん?中入るか?」

 

 

「ううん。あのさ、聞いてもいい?」

 

 

「何だ?」

 

 

「エレンおじさんってどんな人だったの?」

 

 

 

 

 

その問いに、一瞬言葉を失った。

アイツはどんな人間だっただろうか。そう改めて言われると少し考えてしまう。

 

 

 

 

 

「…‥急にどうした」

 

 

「オレの名前ってエレンおじさんからもらったんでしょ?」

 

 

「だろうな」

 

 

「だからどんな人だったのかなーって気になって色々な人に聞いたんだ。近所の人とかはエレンおじさんは英雄だって言ってたけど英雄ってどういう人がなれるの?」

 

 

「…‥英雄、か」

 

 

 

 

 

英雄とは何とも何とも聞こえのいい言葉だ。

その称号を与えられるまでのアイツの扱いは化け物だった。

内政が変わりアイツが人類最後の希望となった時、罵声を浴びせていた連中は手の平を返しまだ十代のガキを英雄と呼んだ。

そしてそのガキは全てを背負い戦い、英雄として生き抜き、死んでいった。

俺にとってアイツは英雄なんて大それた奴なんかじゃない。

俺にとってアイツは、部下であり、仲間であり、恋人だった。

ただ、それだけだ。

 

 

 

 

 

 

「オレね、よくわかんないけど皆にすごいって言われるから大きくなったら英雄になろうと思ったんだ…‥けど」

 

 

「けど?」

 

 

「父さんも母さんも英雄なんてならなくていいって言うんだ」

 

 

「…‥その通りだエレン」

 

 

 

 

 

あの戦禍の中で英雄と言う称号を誰が好き好んで欲しただろうか。

その称号は得る為には多くを犠牲にしなくてはならない。しかし、得た所で何の飾りにもならない。目には見えぬ枷になるだけだ。

 

 

 

 

 

「お前は英雄になんてならなくていい…‥ただ、誰かに愛される人間になれ。それは英雄になるより凄い事だ」

 

 

 

 

 

不思議そうな顔をするエレンにもう遅いから寝るぞ、と声を掛けると家に戻った。

今はまだ、解からなくてもいい。それでも、きっといつかは気付くだろう。

エレンを寝かしつけると、その寝顔をそっと撫でた。

 

 

 

 

 

「…‥エレン」

 

 

 

 

 

どうか、この小さな命が歩んでいく世界に、もう二度と英雄と呼ばれる哀れな存在が現れん事を。

なあ、そうだろエレン。

初めて想いを告げた時、俺なんかでいいんですかと泣きじゃくっていたアイツの顔を思い出し少しだけ胸が苦しくなった。

 

 

 

FIN .